私がまだ20代の頃、アメリカでプロダンサーとして「ダンスアメリカ」というダンスグループに所属して、全米公演をしていたことがありました。私の踊るナンバーのひとつにロックンロールの曲があり、パートナーは白人の女性でした。コスチュームは50年代風で、ツイストやジルバを入れたジャズダンス風のものです。ある時、NYのマンハッタン島とスタッテン島を往復するフェリーの中で公演する機会がありました。そのフェリーは自由の女神を横に見ながら進むもので、アメリカ国内からの観光客もたくさんいます。その時フェリーではフェスティバルを行っていて、その一環として私達のダンスグループが参加していたのです。50年代をアメリカで過ごした人々の前で、20代のアジア人の私がロックンロールを踊るのは、恥ずかしいような場違いなような気持ちがして複雑でした。
また、NYでペアダンスを教え出して何年か経った頃も、個人レッスンでキューバ人の男性が私に「サルサを教えて欲しい」と訪ねて来ました。この時も、サルサ(ラテン)の本場、キューバの方に私がサルサを教えるということに、ロックンロールの時と同様の気持ちでした。しかし今では、ここ日本で、私はヨーロッパ人にワルツを、アメリカ人にスウィングを、アルゼンチン人にタンゴを教えるなどという機会が少なからずあります。今では、以前のような感覚はなく、ただ私の所へ来てくれてありがとうという気持ちだけで接しています。
ダンスを人に伝えるということが、私の天職であり喜びだと心から感じます。
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