文化・芸術に対するサポート

今回は、文化・芸術に対する日本とアメリカのサポートの違いについてです。

私は20歳でアメリカに渡り、20代30代をNYを中心にダンスと共に過ごしました
。始めに、アルビン・エイリーというモダンダンスの学校で2年半学び、その後、オー
ディションにより奨学金を受けながら、ダンスシアターオブハーレムというバレエ学校
に3年半通いました。3年半のうち、始めの2年を過ぎた頃は、カンパニー(舞踊団)に
入団することが出来、給料をもらい始めました。日頃のクラスで使用するバレエシュー
ズも無料で学校から提供されました。

その後、タップダンスや、芝居、歌などの学校も行きましたが、次のステップとして、
社交ダンス(アメリカンスタイル)やリフトの学校にも通いました。ここでもオーディ
ションにより奨学金を受けることが出来ました。その間、色々なダンスグループや芝居
、ミュージカルで公演しましたが、キャリア初期の頃「ギャラなし」のことはあっても
、自分で金銭的な負担をすることは一度もありませんでした。もちろん、ギャラなしか
ら、段々とリハーサル費や公演費をもらうようになり、プロとしてギャラを頂くように
なりました。

帰国して日本のダンス関係の方に話を聞くと、発表会はもちろん、セミプロの公演にも
出演者に「ノルマ」というものがあり、ダンサー達は、かなりのチケット(多い場合は
20枚など!)を持たされるそうです。家族や友達にチケットを買ってもらっても売り切
れない場合は、自分で負担をするそうです。バイト代が全て飛んでしまうという話も良
く聞きます。また、割と大きなバレエ団などでも女性はギャラがないということは多い
と聞きます。そのような負担がありながらも、ダンスを続けたいと言う気持ちは素晴ら
しいとも思いますが、何とか状況が良くならないものか、といつも感じてもいます。

このようなお話をすると、まるで、アメリカのダンス学校やダンス業界は日本に比べて
景気がいいようですが、決してそうではありません。日本との大きな違いは、多くの芸
術団体・スクールが、国や市、企業、そして一般の方からの寄付金に支えられているこ
とです。才能ある若者を一人でも多く育てたいという思いに賛同する人々が、アメリカ
の文化・芸術全体を大きく支えています。私が通った全ての学校でも、ホームページで
は必ず「Donation(寄付)」の案内があり、いつでも誰でも参加出来るようになってい
ます。金銭的な寄付が難しい人でも、時間の寄付、労働力の寄付、応援メッセージを送
る、など、個人個人が出来ることで貢献をすることが、社会的な義務であるという考え
がアメリカでは強いです。

夢と感動を与える活動を、国や市、企業、そして一般の方が積極的に応援するようにな
ることが、私の願いでもあり、日本の文化・芸術レベル向上の鍵だと思います。